沿革

地質学研究に欠かすことのできない顕微鏡観察用の岩石薄片・研磨片の作製技術は今から約130年前にドイツ人地質学者のナウマン(H.E.Naumann)とゴッチェ(K.C.Gottsche)によって伝授されました。機械設備が乏しい中、当時は薄片、研磨片の作製工程のほとんどが技術者の手作業によるものでした。

しかし、昭和27年頃より薄片・研磨片作製の基本となる1次処理の試料成形に、それまでの岩石挟割機やハンマーに替わって、ダイヤモンドカッティングマシン(岩石切断機)が導入され、作業効率の進歩を遂げました。また、地質学研究の視野の広がりにより、過去に困難とされてきた難しい試料の薄片、研磨片の作製依頼が増加し、その要請に応じるためにも、機器類の更新、用途別に多種多様に出回るエポキシ系樹脂や接着剤を試験、選別しながら採り入れ、画期的な成果を遂げてきました。このような技術革新は当研究会に所属する専門技術者たちの探究から来る結果と言えます。

本研究会発足の経緯は昭和31年に全国の薄片、研磨片の作製に携わる技術者が、さらなる技術革新を図る上で、個々の培ってきた能力や創意工夫を発表できる組織の必要性を、当時の(故)松 権五郎氏(東北大学), (故)阿部 久九兵衛氏(東北大学), (故)我妻 儀一氏(東京教育大学), (故)石川 七右エ門氏(地質調査所), (故)大野 正一氏(地質調査所)らの諸先輩が唱えたことが始まりです。その働きかけにより、全国の大学を中心に薄片、研磨片の作製を主とする技術者探しが始まりました。

昭和33年7月、第1回「全国薄片製作技術者打合わせ会」が川崎溝の口の地質調査所(現、つくば市(独) 産業技術総合研究所)において開催されました。第1回の会合には全国より28名が参加し、組織の名称や規約の制定が行われ、「日本岩石鉱物特殊技術研究会」が誕生しました。初代研究会会長には、(故)松 権五郎氏(東北大学)が就任しました。翌年以降は、全国各地に在籍する会員の職場見学を兼ねる意味も含めた開催地の巡回制が採られました。また、翌年6月には研究会報「地殻」が創刊されました。研究会発足時から現在に至るまでの会員数の推移は昭和40年代まで増加傾向をたどり、昭和48年には63名に上りました。その後は定年退職による後継者の不補充、専門技術者の職種替え等による退会で減少しています。研究会発足以来半世紀が経った現在においても、研究発表討論会が巡回制により毎年開催され、平成24年には会の名称を「日本薄片研磨片技術研究会」に改めました。今後も地球科学分野はもとより関連領域において必要不可欠な顕微鏡観察用の岩石薄片、研磨片作製の高度な技術力が期待されます。

参考資料:現地調査で使用されてた偏光顕微鏡

薄片をのせる部分

正面から撮ったもの

組織

当研究会は、岩石・鉱物・化石・金属・非金属・構造地質・耐火物等の薄片・研磨片の製作および試験に伴う試料調製に関与する専門技術者によって組織されています。また、技術者相互の技術開発と知識の高揚に努め、広く地球科学とその関連領域の研究に寄与することを目的としています。