薄片・研磨片
岩石薄片作製工程版画:切断片(接着面)の研磨
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薄片(はくへん)とは

薄片とは本来「薄いかけら」、または「平らな切れはし」を意味します。岩石はいろいろな種類の鉱物の粒からできていますが、それぞれの粒はとても小さいため肉眼で見ただけではわかりません。しかし多くの鉱物は「薄くすると光を透す」性質をもっています。そこで地質学・地球科学の分野では、岩石を平らに磨き、その磨き面を接着剤でガラスに貼り付けてさらに薄く擦り減らした「岩石薄片」が必要となります。この「薄片」を偏光顕微鏡とよばれる偏光を用いた顕微鏡で透過観察する(=光を通す)ことにより、鉱物の種類や結晶構造など、地球科学解明の重要な手掛かりを見つけることができるのです。

 

薄片は地質学・地球科学の分野だけではなく、生物学、医学の分野においても必要とされています。例えば骨(生体骨)を薄片にしてその密度を顕微鏡で観察することは、骨粗しょう症の原因解明につながります。病理検査(顕微鏡レベルでおこなう病気の原因を究明するための検査)用の薄片は、骨、皮膚、筋肉に含まれるカルシウム塩の結晶を破壊することなく「自然のままの形状」で維持しながら専用樹脂での包埋硬化処理(薄片をつくるサンプルを樹脂に埋め込む)を施した後に作製されます。

 

*包埋硬化処理とは、亀裂が多い試料や、多孔質試料など、多数の穴により脆弱(ぜいじゃく)性質の試料を薄片や研磨片として作製する場合において、試料の破壊を防ぐために、試料に樹脂を浸透させて硬度を高めるための処置です。近年では真空装置を応用し真空含浸処理を施す場合もあります。


 

偏光顕微鏡で見た岩石薄片

 

かんらん岩
火山岩
フズリナ化石
かんらん岩(クロスニコル)
火山岩(クロスニコル)
フズリナ化石(オープンニコル)

 

 

研磨片(けんまへん)

研磨片を単語として調べてもその意味は出てきません。研磨片を「研磨」と「片」に分けると、「研磨した片」ということになります。研磨とは、ある固体の表面をより硬い固体の角や表面を利用して断続的にこすることによってその表面を削ったり磨いたりして平滑にすることです。「片」はここでは片割れ、切れ片と考えていいでしょう。

 

地質学の分野での「研磨片」とは、主に反射顕微鏡での観察や電子線をあてる電子線マイクロアナライザー分析で使用するものを指します。上で述べた薄片とは異なり、岩石や鉱石に含まれる不透明鉱物は偏光顕微鏡の透過光では観察できません。そのため、その表面を平らに磨いた研磨片が必要となります。研磨された面に電子線をあてることにより、岩石や鉱物の元素の検出や濃度を計ることができるのです。研磨面には磨き傷や研磨する過程での研磨材による表面の粗さを残さないようにすることが重要です。それらの傷や粗さは顕微鏡観察や電子分析データーの結果に反映されてしまいます。

 

研磨技術は古くからカメラや望遠鏡の光学レンズ、現在では半導体や集積回路用のシリコンウエハーの製造過程などあらゆる分野に用いられていますが、研磨する対象物によってその手法や研磨材は多種多様です。岩石や鉱石を顕微鏡や電子分析用に研磨する場合、最初に粒の粗い研磨材(ボロンカーバイト、炭化ケイ素、酸化アルミニウム)から粒の細かい研磨材を使い分けて研磨面のベースを作ります。さらに研磨面の精度を良くするためには、ダイヤモンド(粒度3~0.25ミクロン)を使用します。

 

反射顕微鏡で見た鉱石研磨片

鉱石研磨片

 

反射顕微鏡で見た鉱石研磨片

 

 

地質学における薄片・研磨片の歴史

地質学研究に欠かすことのできない顕微鏡観察用の岩石薄片、研磨片の作製技術は今から約130年前にドイツ人地質学者のナウマン(H.E.Naumann)とゴッチェ(K.C.Gottsche)によって日本に伝授されました。機械設備が乏しい中、当時は薄片・研磨片の作製工程のほとんどが技術者の手作業によるものでした。

 

昭和27年頃になると、それまで岩石をある程度の大きさに切断するために使用していた岩石挟割機やハンマーに替わってダイヤモンドカッティングマシン(岩石切断機)が導入されはじめ、作業の効率が劇的に向上しました。

 

また、地質学がその研究視野を広げていくと共に、過去に困難とされてきたサンプルの薄片、研磨片の作製依頼が増加してきました。この要望に応じるためにも、使用機器類の改善や多種多様に出回る接着剤などを試験・選別しながら取り入れ、薄片技術は目覚ましい成果を遂げてきました。

 

このような技術革新は当研究会に所属する専門技術者たちの探究から来る結果と言えます。